ina takayuki

Photo by Kazuhiro Tsushima (TONETONE PHOTOGRAPH)

BYEBYE HELLO-さよならこんにちわ-

出会いと別れを繰り返す。 生きてきた中で、どれだけこれを繰り返してきたのか?
クラブという特異な場所で絵を描き始めて、十一年の月日が経ちました。
音楽とタバコの煙と人の声とお酒の匂いに包まれて、絵を描き続けて、
今もこうして描いている。

本当にたくさんの人に出会い、たくさんの言葉を交わしてきた。
もう後、数年も経てば人生の半分をそこで過ごしてきた事になる。

以前にも増して目紛しく変化する世界。
人の在り方さえも刻々と変化し、モノやヒトの消費期限も異常に短い。
括弧たる答えを世界に求める心も今や少なくなった現代において、
成りや形や道程の、真意なる模範は必要ではなくなっているのだろう。

「ヒーローはいない」世界ではなくて、
「ヒーローを期待していない」世界がどこに希望を持つのだろうか。

ボクの道程においても例外もなく出会いや別れが大きな波となして襲ってきた。
「こんにちわ」の場面よりも「さよなら」の場面が色濃く影を落とした。
それでも、こうして描き続け生きている。
余分な外殻が削げ落ちた身体で考えた結果はとてもシンプルだった。

出会い、別れ、出会い、別れ、出会い、、、、。

出会い別れを永遠回帰するのが生きるという事ならば、
言葉や文字等だけでも、最後は「こんにちわ」と締めくくりたい。
慣れ親しんだ自分の感覚に、新しく入ってくる感情にも笑顔で「こんにちわ」と迎え入れたい。

「こんにちわ」ボクは今もこうして描いてるよ。
どんなに風が強くても、雨が降っても、夜が長く続いても、太陽が燦々と降り注いでも、
この身が砕け地に伏せ風化するその時まで、何も変わらない。

永遠に線は伸び、別れ、繋がり、交わり、新たな点に繋がり、また伸びていく。
さよならこんにちわ、またげんきにあいましょう。